大きな蟻(4/9)

朝からパートナーの付き添いでPLAY!ミュージアムへ。酒井駒子展のレセプション。荷物持ちをしたり、話し相手になったりしつつ展示会場にたたずむ。

パートナーが名刺交換や仕事内容の話をしている間、すこしの居づらさを感じる。慣れないな〜と思う。ホームパーティーや、がっつりしたレセプションなんかの多数の人が出会う場所は少し苦手である。昔は特に手持ちぶさたでその場にいることが耐えがたくて、いつも逃げ出すことを考えていた(実際にさっさと帰ってきたこともある)。
中高生くらいの経験から、場に馴染むことや社交的に見せることが本当に苦手になっている。特に話し始めがだめで、変に意識するあまりダサい感じの話しかけ方をしてしまう。ダサいという自意識を持ってる時点でこの場ではもうアウトである。
最近はこの感覚に慣れが出てきた感じがある。パーティーでも自分のペースで動こうそれで間違いはないさと思うようになった。人前で「何もしない」ができるようになった。これはスキルであると言いたい。話したい時だけ話し、帰りたければ勝手に帰れば良いのだ。
というわけで、そういうときはキャプションを読んだり外を眺めてたりしていた。大事なのは邪魔にならないこと、そのためにスケジュールと地図の全体像を把握しておくことが肝要かなと感じた。

つつがなくおわり、帰りの電車。パートナーに「昨日の日記読んだけど、デザイナーの人が「全てが運だ」と言うのにはすこし違和感を感じた」と言っていた。しかし説明できないから整理して後で話すという。

吉祥寺で別れ、私は荻窪で降りる。無印でノートを買い阿佐ヶ谷まで歩いた。よく行く天徳泉の通りに見慣れない中華雑貨屋があり、立ち寄ってみる。中には台湾や中国の食器やトレイ、服なんかが置かれている。一年ほど前に荻窪から引っ越してきたそう。店番をする女性の脇には若い芝犬がいてとっても癒されてしまった。アキナという名前で5歳くらいだという。元は保護犬で「もらった時にはもうこのくらいの大きさだったのよー」と話してくれた。入店した時に手招きしてくれるほど心優しくて人懐こい性格。のわりに撫でても尻尾ひとつ振らないところがクールで猫っぽいところもある。「ツンデレなところがあるのよ〜」とのこと。皿などを買ってお礼を言って退出する。良いお店を見つけられて嬉しい。

そのあと18時から初講義。近代デザイン史という授業だ。先生は編集とデザイナーのどちらも経験している人で、現在は地方や中小企業のブランディングやデザインを通じた町おこしをしているそう。デザインという概念は社会通念と密接に関わっているという考えが授業の底に流れていて、歴史的な事象を通じてデザインとは何かを考える授業だということだ。めちゃくちゃにおもしろい。一回3時間でも足りないくらいまだまだ聞いていたいと感じた。
桑沢卒の友人にそのことを伝えたら「だよね! 桑沢は座学が一番!」というようなことを言っていて笑ってしまった。気が合う。

終わったあとに夕飯。小松菜と豚肉、もやしのオイスターソース炒めと米。おいしかったし自炊して偉い。
その後先輩のバナーの修正仕事を片付け、銭湯へ。行きつけは玉の湯という銭湯。交互浴はすばらしい快楽だなぁと思う。『雑草で酔う』で培った酔いテクニックを使って、交互浴酔いをできないか試みる。水に浸かっている状態で、感覚を自分の体と上空に集中する。吐く息を細く長くしてリラックス状態に入る。気がつくと、周囲の音が大きく聞こえたり小さく聞こえたり、他人の声が何重にも聞こえたり、水面の光が目にチラチラとちかつくようになってくる。視界には揺らぎも生まれてくる。あまり集中して気を失っちゃうとまずいのでほどほどにしておくが、これは成果ありかもしれない。「サウナはドラッグ」なんて言うが、あながち間違っていないかもしれない。

気持ちいい状態で家に帰り、ベッドに横たわる。友人とラインをして、眠くなってきたから目を閉じた。