大きな蟻(5/3)

昨日の深夜1時に家を出た。ドン・キホーテに自転車で向かった。というのも、金髪にしようと思い立ったからだった。

それまで、僕は家でくどうれいんちゃんの『うたうおばけ』を読んでいた。掲載されていたエッセイの一つに大学生のときに金髪にしたエピソードがあった。おお! と思った。なにせ、僕も大学生の時に同じことを思っていたから。

大学4年の時に、卒業までにやっておきたいことリストを作った。「関西を旅する」「C7Cに行く」「名古屋を離れる前に味仙でエビマヨを食べる」など。半分くらいはできて、半分くらいはできなかった。金髪はできなかった、バイト先の書店では派手な髪型では接客しちゃいけなかったから。
そのまま引っ越しがあって、入社式があって、配属があって...そのことを忘れていた。忘れる時はいつだってそのことを知らない。僕はむしろ外に何かを求めていった。まだ知らない東京のギャラリー、喫茶店、本屋、雑貨店...東京に来て2年が経って、僕は僕自身のやりたいことを見直す時期な気がする。今年で25歳になる。生まれてから長い年月が経った。

図らずも僕は金髪になりたいという欲求を取り戻すことができた。エッセイを読んだ時の、胸の高まりといったら! そしてやるなら今しかなかった。

そうして僕は深夜1時の街を自転車で走ることになった。今から髪の色が金色に変わる。なんて素晴らしい気分、まるで絵本のようだ。なんだか
無敵な気分。僕は何にだって勝てる。さあかかってこい不幸。今夜だけは何にも打ち負かされない気分だった。だって僕は金髪になるんだから。