大きな蟻(11/1)

もう11月になってしまった。あと9日で24歳になる。今年こそ、なにか目に見えるものを出したい、と思っていたのにほとんど何もせずに終わってしまった気がする。

みんなが感じてきたことだと思うけど、歳をとることには焦りが伴う。こんなんじゃすぐ30歳、40歳になってしまう。このままでは27歳で死ぬことはできないだろう。
「ゆるゆるやってけばいいじゃん」と話す新しめの価値観の自分と、「早く結果を出さないと!」って急かす旧来からのぼくが混在している。交互に顔を出してくるのが厄介だな。そのたびにもやっとすることになる。

この間、一個下の友だちと話している時も「歳取るの焦りますよね」という話になった。演劇界隈で精力的に活動し、注目されている子がぼくと同じことを言う。僕は余計焦る。そういえば、くどうれいんちゃんも日記で25歳になりたくないと書いていた。いつか歳をとることを素直に喜べるようになればいい。子供の頃は歳を取れて嬉しい、と感じられていた。

そういうことを考えながら、神社のベンチに座っている。ここは最近見つけて時々来るようになった。神社の主の猫が目の前を横切る。僕は家で作ってきたサンドイッチを食べる。パンが硬くて意識して顎に力を入れる。そして耳元ではジム・オルークの「eureka」が流れ出す。

イヤホンからはたくさんの種類の音が流れ、外界では強風で揺れる葉っぱ、人が砂利を踏む音がぼくを同時に取り巻く。急に遠いところに放られているような気分になった。いろいろなことが変わり続ける。大切なものも通り過ぎていく。ぼくはなんとも寂しくなった。
秋ですね、とひとり確認する。そして、ベンチから腰を上げた。

 秋の終わりはとても苦手だ。結局、今年も何にもなれなかった。あと9日で24歳になる。