約束を破る

 約束を破られた。ぼくは悲しい。

 

 友だちとライブに行く約束をしていたのに破られた。オールナイトのイベントに行こうと思って、ぼくはチケットを取っていた。友だちとは楽しみだねって言いあったし、言葉以上にぼくはすごく楽しみにしていた。

 

 でもイベントの2日前に「ごめん!いけなくなった!急に京都に行かなきゃいけなくなって!」と連絡が来た。「ええ、残念!どうしたの?」と返信を打つ。来れなくなったならとても残念で悲しい。一緒に楽しく遊べると期待していたから。

 

「それが、別の友だちが京都のフェスのチケット取っちゃったっていうんだよ」と返信が来た。え、そんな理由でぼくとの約束をキャンセルするのか。「チケット代は払うね、ごめんよ」とメッセージは続く。

 お金の損はないし、ぼく自身はイベントを見れるわけだから損はないでしょ? だから直前にキャンセルしてもいい。これはお金や損得の問題か? いや、ちがう。友だちとの約束をないがしろにしているという問題だ。友だちは「ぼく+イベント」と「別の友だち+イベント」を天秤にかけ、後者を取ったのだ。

 そして、論理的に検討して、選んだ道と、選ばれなかった道。もう一方に比べて、ぼくは価値が低く、選ばれなかったほう。約束を破りやすく、何を言っても傷つかないほう。そう思われているんだ。病気や家族の不幸ならばしょうがないと諦められる。悲しいけど、そういうのは避けられないものだ。しかしこれは違う。ぼくは手のひらを返すように態度をコロコロと変えられ、どうでもいい存在なんだと軽んじられている。きづけばいつもこんな扱いばかりされている。自分は世界で一番無価値な存在なんだ。空気を吸うのも申し訳がない。自分を含め、何も信用できない。そう思えてくる。

 

 しかしいまなら分かる。ぼくは傷ついている。そして怒っている。こういうとき、先に入れていた予定ではなく、明確に優劣をつけて友だちを選ぶというのはどういうことなんだろう。ぼくに、友だちに失礼だ。ぼくを含む友だち大勢にそんなことをしているならいますぐやめたほうがいい。確実に彼らを失うことになる。

 

 ぼくはこれからその友だちとまた会うだろう。そしていままでと同じように接しているように見えるかもしれない。でも、決してぼくらの目は合わず、ちょっと下のほうを向いて話すことになる。誕生日を祝えるように覚えておくのもやめる。本も貸さない。ライブにも誘わない。そしてそれを絶対に言わない。信頼は失われたのだ。本当はぼくはそれを君に伝えたいのだ。なあなあで済ますこともできる。けれど、ぼくは絶対にそうしたくない。ぼくは自分を大切にしたい。大学生までならいいよで済ませていたかもしれないが、これからはきちんと人や自分と向き合いたい。ちゃんとした人付き合いとはこういうことだ。ぼくは誠実に生きたいと強く願っている。