大きな蟻(5/17)

朝、録画してあった『若おかみは小学生!』を観る。あまりに良くできていて泣きまくる。若おかみには辛いことがたくさん起こるのだが、それを気丈に乗り越えて成長したり新しい喜びを獲得していったりするところにとても泣かされる。「すごい! 名作だ!」と一通り騒ぎ立てた。

 

私見では、この映画で最も効果的だったのはその構造だと感じている。「喪失を抱えた小さい女の子が屈託のない明るさで逆境を乗り越えていく」という「不幸を克服するエピソード」の典型じゃないだろうか。この、不幸な身の上の少女がひたむきな努力でそれを跳ね除けていく、という構造は古くから灰かぶり姫などの童話として親しまれてきた。そして、幼い頃から繰り返しインプットしているがゆえに、私たちの脳にはこの構造への強い共感がインストールされているのではないか...ということだ。

ちょっと怖いのは、そういうキャラクターが善として私たちの価値観に刻まれているということだ。じゃあ、くよくよしたり、仕事をサボったり、ずるしたりする若おかみだったら...? ということを考える。私は落胆したり叱ったりせずにいられるだろうか。

 

この映画は伏線もキャラクターの構成も場面も発する言葉も、どれをとってもすばらしかった。特にウリ坊という幽霊が現れ、消えていくことの尊さといったら... あと、占い師のお姉ちゃんと若おかみとのシスターフッドと言ったら... 大事なものがたくさん詰まった映画をこのタイミングで観れて、本当に良かった。

 

夜には毎週恒例のリモート映画鑑賞会。今日は小津安二郎の『東京物語』を観た。昨年のあいちトリエンナーレのホーツーニェンの展示を見て以来、ずっと観ようと思っていた。期待値は高かったが、やはり名作だった。有名な「私ずるいんです」のシーンにはハッとさせられました。考察などは読んでないが個人的には、そこは血の通じ合わない者たちの親密な「分かりあい」のシーンだと感じた。紀子自身の家族のこと、紀子が何に対して「ずるい」と感じているのかは今後の人生で考えていきたい。

リモート鑑賞をしてると、いろんなことを教えてもらえるから嬉しい。「人物を中心に据えているのは小津構図といって有名なんだよ」と教えてもらった。僕は理系だったし、アカデミックなカルチャーに触れてこなかった。だからとても嬉しいのだ。

 

観ながら食べていたミニストップの海苔巻きは全然おいしくなくて、それだけが悲しかった。