大きな蟻(5/18)

調子の悪い一日だった。朝、麦芽クッキーとパック売りのアイスコーヒーを飲む。なんだかふらふらする。「なんかちょっとふらふらなんだよね」と恋人に話すと「気圧じゃない?」と一言。そうね、気圧の変化のせいかもしれない。

調子が悪いときに何かのせいにするというのは、ちょっとした暮らしの知恵だ。僕はおよそ二十歳すぎでこうすると楽になることが分かった。原因は本当じゃなくてもいい。本当は朝飲んだコーヒーのカフェインのせいかもしれない。でも、ただ何かのせいにするだけで、自分の持っている物の正体が分かって安心できる。
病気の診断を受けるのと少し同じかもしれない。なんか調子悪いな〜と思うよりも、「インフルエンザです」と診察された方が自分にうまく説明できて安心する。
また、人にもうまく説明できる。今日は気圧で頭が痛いんだよ、と伝えるだけで家族や友人は親切にしてくれる。理由がないと人に伝えづらい。

だから今日は「自分は気圧のせいで体調が悪い日だな〜」と思いながら暮らした。自分にも優しくなる。仕事もゆっくりやりなよ〜とかお昼は食べれるものにしなよ〜とか自分が親切だ。そうしないと、時々内なるマッチョが出てきて、へこたれんな! とか我慢が足りない! とか言う。マッチョとうまくやるために仮病もどきを使う。世の中にもまだまだマッチョはいるんだけど、彼らに対しては見えないように中指を立てていく。怒られそうになったら逃げる。中学のころから逃げて逃げて、やっと自分の住みやすいところにやってきたような気がする。自分を甘やかし続けて、心の底まで甘いおじいちゃんになれたらいいな。