ろくでもない一日の(短い)愉快な夜に

今日、目が覚めると、外が薄暗かった。
ああ、やってしまった。
時計に目をやると午後5時すぎだった。

午後5時って"ごごごじ"と"ご"が3回も続くなぁとどうでもよいことを考えながら、今日やりたかったことを思い出してため息をついた。
今日は1人で街に出て、記事のための取材を済ませて、撮りためた写真を現像に出して、ついでに美味しいパンでも買って帰ってこようと思っていたのに。もうそんなこともできる時間じゃない。

とりあえずシャワーを浴びて、外に出ることにした。乗り馴れたライムグリーンのビアンキのピストバイクにまたがる。そろそろ掃除してあげないとな、と思いつつ漕ぎ出した。目的地は隣の駅のツタヤ。このあいだ借りた映画の延滞料金を払いにきたのだ。やれやれ。夕方に起床して、延滞料金を払って終える一日は、なんて残念なんだろう。残念な一日のロールモデルとして小学校の道徳の教科書にでも載せてくれた方がかえって清々しい。

このままツタヤを後にするのは余りにも味気なかったので、「ドリフターズ」の一巻と「横道世之介」のDVDを手に取り、レジに並んだ。この横道世之介は借りるのは3回目だ。160分もあってダヴィンチコードについで長い映画だけれど、僕はとても気に入っていてかれこれ見るのは5回目だ。特に、主人公の世之介が暑い日に部屋で麺をすすりながら週刊誌を読んでいるシーンが好きだ。画面に張り付いて何回も巻き戻した。

さて、そんなことはどうでもよくって、店の名前が印刷された薄くて白いビニール袋をぶら下げて近所の中華料理屋に行った。ここの角煮飯が美味しい。炒飯はそこまで美味しくない。久しぶりに来たら値上げされていて、少し悲しくなったけれどやはり角煮飯を食べるしかない。僕はこの店の奴隷になりさがってしまったのかもしれないな。味はやはり美味しかった。左手でスプーンを、右手で先ほど買ったコミックをめくっていると、それはすごく器用なチンパンジーの芸に思えて来て僕はコミックを鞄にしまった。もうちょっとゆっくりしていたかったけれど、店のおばちゃんが早く帰るよう催促して来たので仕方なく自動ドアをくぐり、店を出た。

そのあと、家に帰った。時計は21時すぎを指していた。とりあえず、最近書くようにしている日記を書き始めた。でも、一旦書き始めるとあまりにも字数が多くなってしまって面倒な気持ちが上回って来た。音楽が聴きたくなって、ceroの「WORLD RECORD」を頭からかけた。bluetoothのスピーカーから流れて来たワールドレコードのはじめの痰を吐く音を聴いて、僕はいい気分になった。こうでなくっちゃ。

それからというもの、ゆっくりゆっくりと溜まっていた日記を溶かすように消化し(この時点でもはや日記ではない)、今に至る。
現在時計は午前3時前。全然眠くない。いつ寝ようかなぁ、寝たくないなぁ、そんな悩みをかかえている。さっき吸った苦手なタバコのせいで、声が少し枯れていて、スピーカーからはミツメのゆったりとした音楽が流れている。

さて、こんな夜は僕はいつ寝たらいいんだろう?