(さらっと)2019年読んで良かった本

いまさらながら2019年に読んで特によかった本を書き記します。とは言うものの、頑張って書こうとすると面倒くさくなってくるのでさらっと紹介します。あんまり頑張って勧めないので、読んだひとのフィーリングでチェックしてみてください。

 

今年は約150冊の本を読みました。本当は200冊以上読みたかった。いつもは読書メーターというサービスに、読んだ本を記録しています。実を言えばブクログに移行したい。何か楽な方法があれば教えてください。

 

また、私は良いものに順位をつけるのが苦手なので、ランキング形式にはしませんでした。この世に存在するあらゆる本は「みんな違ってみんな良い」ものです。今回は、2019年に出た本のなかで、私にとってチャーミングな本であるかということを基準にピックしてみました。 

 

 

 

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』

鹿子裕文ちくま文庫

一年で一番笑って、一番泣いた本です。俗で、尊い。一番読んでほしい。

 

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◎あらすじ

福岡の街中に、毅然としてぼけた、ばあさまがいた。一人のお年寄りが、最期まで自分らしく生きるために、介護施設「よりあい」が始まる。「自分たちで自分たちの場ちゅうやつを作ったらよかっちゃろうもん!」熱くて型破り、超個性的な人々が、前代未聞の特別養護老人ホームの開設を目指し、あらゆる困難を、笑いと知恵と勇気で乗り越えていく実録痛快エッセイ。

 

 

ジャップ・ン・ロール・ヒーロー

鴻池 留衣(新潮社)

Wikipediaの形式を用いて進行する。形式美に脳汁が止まらなかった。ちょっと村上龍の匂いもする。この年のベストわくわく賞です。

 

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◎あらすじ

我々に可能なのは、盗むことだけ――。「ポスト真実」の時代を射貫く話題作。1980年代に海外進出を果たしたバンド「ダンチュラ・デオ」は実在したのか? 原曲を丸パクりして証明すると嘯くギタリストの喜三郎に惹かれる僕。慶大生バンドの戯れは、やがて歴史的陰謀の情報戦へと巻き込まれてゆく。フェイクがオリジナルを炙り出し、真実がウィキペディア的に編集される時代の狂騒と不気味を描く。

 

 

人間界の諸相

木下古栗集英社

幻の作家、木下古栗氏の最新巻。AIで永遠にすべきなのは美空ひばりではなく彼だと思う。

 

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◎あらすじ

謎に満ちた女・菱野時江とは何者なのか──。

突如、連絡が取れなくなった時江の消息を追う二人の友人、渋崎咲子と古河内栗美は、携帯端末のSNSを頼りに彼女の居場所を突きとめた。
そこには「あの国は暮らすにはいいが、生きるのは窮屈すぎる」という一文が……。
「幻の淑女」より

作品の全貌は、読んでみてのお楽しみ。
文学界の異才・木下古栗が挑んだ、なんともトリッキーなエンタメ風小説!

 

 

声の物語

クリスティーナ・ダルチャー早川書房

社会の写し鏡としてのSFが好きです。それは物語を通してしか語られないものが存在するから。まずはあらすじを読んでみてください。

 

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◎あらすじ

アメリカのあらゆる女性から、言葉が奪われた――。大統領の強制的な政策のもと、すべての女性の手首に、一日100語以上を喋ると強い電流が流れるワードカウンターがつけられた。女性たちは日常生活を制限され、出国することも禁じられた。認知言語学者だったジーンは、夫、息子たち、幼い娘とともに暮らしていたが、ある日彼女の前に大統領の側近たちが現れる。かつて失語症の研究をしていた彼女に、事故で脳に損傷を負った大統領の兄を治療する研究を、ある条件と引き換えに依頼したいというのだが……。“21世紀版『侍女の物語』"と激賞を浴びた、いま、この時代に読むべきディストピアSF。

 

 

ディスタント

ミヤギフトシ河出書房新社

読むことを通して本当に美しい光景が目の前に立ち現れた。すばらしい体験でした。少年時代に私が心から委ねあえるような友達を欲していたからか、小説内で広がるブラザーフッドはとてもきらきらと輝いていた。泣きました。

 

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◎あらすじ

「僕をあなたの部屋に連れていってほしい。
そして、あなたと僕、ふたりの写真を撮らせてほしい。
まるで、僕たちふたりが恋人同士であるかのような――」

イメージがつなぎとめる記憶、ポップカルチャーの引用、海の向こうに見た風景……
気鋭の現代美術作家が描く、まったく新しい〈青春小説〉。鮮烈なデビュー作。

 

 

IQ2

ジョー・イデ早川書房

シリーズ第2弾。相変わらずめちゃくちゃおもしろい。ケンドリック・ラマーや(たしか)スヌープ・ドッグといったラッパー、シャックなどのNBA選手が出てきてアツい。ミステリとしても手に汗握る。ミステリ・ナードにはもちろん、ブラックカルチャー好きにおすすめです。

 

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◎あらすじ

亡き兄の恋人だった女性に依頼されて、高利貸しに追われるDJジャニーンを助けることになった探偵“IQ”。腐れ縁の相棒とともにジャニーンが住むラスベガスに向かうが、事態は予想よりも深刻だった…中国系ギャングの個人情報を盗んで売ろうとした彼女は今や血も涙もない犯罪者たちに狙われていたのだ!IQの冴えた頭脳は彼女を救えるのか?三冠受賞作『IQ』につづく、興奮と謎解きに満ちたシリーズ第二作!

 

 

毎日写真

鷹野隆大(ナナロク社)

著者は写真家で、写真についての文章なのだけれど、もっと違うことについて書いているように感じた。行為を超越して、世界の仕組みに触れるような。

 

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◎あらすじ

2014年、愛知県美術館での「事件」も記憶に新しい写真家・鷹野隆大が初めて語る、写真、性、文学。男性ヌードを被写体に、ジェンダーセクシャリティを問う作品で
独自の高い評価を得る写真家・鷹野隆大氏の初となるエッセイ集。日本経済新聞の連載に書き下ろしを加え、執筆とあわせて撮影された街の風景を中心とした写真作品も随所に挿み込まれます。夏目漱石『こころ』、『雨月物語』、映画『トラック野郎』まで、古今の名作を題材に、性の多様性を見つめ、物語を写真的に再解釈して描く文学的なエッセイのほか、写真論、街歩き、趣味の古武術など、幅広い題材が語られます。

 

 

サブリナ

ニック・ドルナソ早川書房

グラフィックノベルという新しい表現ジャンルに含まれる一冊。サブリナがいなくなったあとで、残された者に対して現代社会の人間集団がどういう反応をするのかが描かれる。インターネットの不確実性が浮き彫りになり、ネット偏重社会はだめだな〜と思う。けどもう完全には抜け出せない時点で終わってるのかもしれない。

 

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◎あらすじ

仕事から帰る途中にサブリナが行方不明になって、ひと月が経った。心配のあまり不安定になった彼女の恋人テディは、遠方に住む幼馴染カルヴィンの家に身を寄せる。サブリナの妹サンドラは、姉に何が起きたかが判明するのを苦しみながら待っていた。そしてある日、衝撃的な映像を収めたビデオテープがメディア各社に送られる―グラフィックノベル初のブッカー賞ノミネート。

 

 

掃除婦のための手引き書

ルシア・ベルリン講談社

言わずもがなです。「さあ、土曜日だ」が一番好き。

 

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◎あらすじ

発売4ヵ月で7刷の大ヒット!
アメリカ文学界最後の秘密」と呼ばれたルシア・ベルリン、初の邦訳作品集!

毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。
刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。……
自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。

 

 

居るのはつらいよ

東畑開人医学書院)

言わずもがなその2。構成がすごいです。

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◎あらすじ

「ただ居るだけ」と「それでいいのか?」をめぐる
感動のスペクタクル学術書
京大出の心理学ハカセは悪戦苦闘の職探しの末、ようやく沖縄の精神科デイケア施設に職を得た。しかし、「セラピーをするんだ!」と勇躍飛び込んだそこは、あらゆる価値が反転するふしぎの国だった――。
ケアとセラピーの価値について究極まで考え抜かれた本書は、同時に、人生の一時期を共に生きたメンバーさんやスタッフたちとの熱き友情物語でもあります。
一言でいえば、涙あり笑いあり出血(!)ありの、大感動スペクタクル学術書

 

 

ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』

木澤佐登志イースト・プレス

めっちゃ興奮した。ダークウェブの存在そのものが神秘。その上ダークウェブはヒッピー的志向のもとで生まれ、成長してきたという背景を知ると、なおぐっとくる。私を含む、Spectatorの読者は読んだほうがいいです。

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◎あらすじ

政府の監視も、グーグルのアルゴリズムも、企業によるターゲティングも、
さらには法律の手すらも及ばないインターネットの暗部=ダークウェブ。
「ネットの向こう側」の不道徳な領域を描き出す
ポスト・トゥルース時代のノンフィクション!!

 

 

愛が嫌い

町屋良平文藝春秋

書籍化している町屋さんの作品の中で一番好き(二番目は『青が破れる』)。どの作品も妙にシンクロしてしまってなみだがこぼれた。このあいだ「文藝」で読んだ「カタストロフ」のレベルが高すぎて途方に暮れました。書籍化したら買います。

 

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◎あらすじ

おおきくなる、つよく逞しく、この夜を越えてゆけ。

自分の、ひとつひとつの輪郭がぼやけて、危機感をもてないまま
今日も一日をやり過ごす。就職して恋愛結婚して、その先に何があるだろう。
地震に金融崩壊。カタストロフに満ちた社会で、丁寧な明日をうまく保てない。
ある日、夜の川のたもとで出会った少年。女友達の幼い子ども。
そして舞い込んできたルームメイト。時を重ねて、夜の時間がほどけてゆく。

黄昏日本の、みずみずしさをたたえた青春物語。
「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の3作を収録した新芥川賞作家の飛翔作。

 

 

ラストです。

息吹

テッド・チャン早川書房

最高でした。すべての作品が思慮と叡智に溢れていた。SFを「スペキュレイティブ・フィクション」と表す傾向があるけれど、チャンはまさにその典型だと思う。特に「息吹」「大いなる沈黙」「オムファロス」には希望や祈りを感じて、泣きました。どうせどれかはNetflixなどで映画化すると思うので、早めに読むのをおすすめします。

 

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◎あらすじ

あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。第一短篇集『あなたの人生の物語』から17年ぶりの刊行となる最新作品集。人間がひとりも出てこない世界、その世界の秘密を探求する科学者の、驚異の物語を描く表題作「息吹」(ヒューゴー賞ローカス賞、英国SF協会賞、SFマガジン読者賞受賞)、『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた「商人と錬金術師の門」(ヒューゴー賞ネビュラ賞星雲賞受賞)、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞受賞)をはじめ、タイムトラベル、AIの未来、量子論、自由意志、創造説など、科学・思想・文学の最新の知見を取り入れた珠玉の9篇を収録。

 

 

紹介は以上です。本当はもっとたくさん紹介したいのだけど疲れてきたのでこのあたりにします。というか、今度会ったときに良い本について私とお喋りしてほしい。

本が売れないって言われてるけど、まずは私は本について話すことから始めてみたいと思います。本を好きな人とでもいいし、本を読まない人とならもっといい。

友だちと「あれおもしろかったんだよ」とか言いながら、適当に散歩するのはいつだってとても楽しいことです。

そして、歩いてたらたまたま本屋があったりして「そうそうこれ!」なんて盛り上がれたら最高だと思う。あるいはそれは本に限らず、映画や音楽や演劇の話でもいい。

とにかく好きなことについてお喋りをつづけようよ、と言いたい。

 

これを2020年の目標として、この記事は終わりです。