ぼくとノミとジョン

覚えている限りで、僕がノミを初めて見たのは小学生の時だったと思う。

当時ちょうど父方の祖父母が僕の住んでいた家で一緒に住むようになった時だった。

それで祖父母が田舎で飼っていた犬を連れてきたのだ。

名前は「ジョン」と言って柴犬に似た雑種のオスだった。もともと祖父母の家に遊びに行くたびに可愛がっていたのもあって、僕と妹はすぐにジョンに慣れた。

母は姑と暮らすようになったわけだけれど、ジョンのおかげでどこかリラックスしているように見えた。

 

あれ、何の話だっけ。

 

思い出した。

そう、僕がノミを見たきっかけはもちろんジョンだ。外で暮らすジョンにはノミやダニがついてしまう。しかし僕は当時それが何なのか分からなかった。

だから、庭にいた祖母に聞いたのだ。

 

「おばあちゃん、これ何?ジョンについてるの」

「あら!いけないわねえ。虫がついちゃって!今取ってあげるから!」

 

そこでおもむろにジョンに近づいた祖母はノミとダニを素手でパッととると、地面に置き、サンダルの底で踏みつけたのだ。祖母が踏みつけた足をどけると、そこにはジョンの血をたっぷり吸ったのか、血が飛沫のように散っていた。そして潰れた虫。

僕が顔を引きつらせていると、祖母は

 

「これで大丈夫よお!アハハハハハハハ!」

 

と去っていった。僕は生まれて初めて犬に同情した。

 

それが僕とノミの鮮烈な出会いであるが、ジョンはこの後21歳まで生き、亡くなった。最後にはろくに動くこともなくなり、ドッグ・フードもほとんど残してしまっていて高校生になっていた僕は、やり場のない寂しさを感じていた。

彼は亡くなったけれど、僕の中に彼の舌のざらつきと獣独特の匂い、そしてノミのトラウマを残してくれた。

 

 

さらに月日が経ち、大学生になった僕はついに彼と同い年になった。

そういうわけで、今この文章を書くに至った。