じょんするめ

いろんな記事を気まぐれに書きます。イイムラヒロキより。

ダウナーな羊の彼のこと

僕には友人がいる。グレーの毛をした羊だ。
彼はいつも落ち込んでいる。
「周りの羊たちはみんな毛が白い。なのになんで僕だけ灰色の毛なんだろうか。はぁ」
彼の口癖はため息だ。

彼はいつも否定的なことばかり考える。例えば、1ヶ月くらい前のよく晴れた暖かい日、僕は彼と並んで歩いていた。ご飯を食べるために学食に向かっていたんだ。そんなとき、するっと、彼の履いているヴァンズの紐が解けた。僕は言った。
「羊、靴紐が解けてるよ。危ないから結んだ方がいいよ」
「はぁ、また解けちゃったのかー。もう僕ばっかり解けるんだよ。もうここ3日で5回目だよ。嫌になっちゃうなぁ。はぁ、僕のこと嫌いなのかなぁ」
とまあ、こんな具合である。
そもそも靴の紐が解けるなら、蝶々結びの上からもう一回結ぶとか、何かすべきだと思う。なのに彼は何もせずに自分を悲観してばかり。

それだけじゃない。一緒にビリヤードに行こうと言って、出かけた時のことだ。その日は本当についていなくって、球をつくどころじゃなかった。ある店はclosedの看板が表になっていたし、ある店ではビリヤード台が埋まってた。さらに他の店ではキューがなかったんだ!
こんなわけで、僕と彼は途方に暮れていた。
自転車を漕ぎ漕ぎ、僕らは話した。
「いやー、今日は残念だったね。こんな時もあるもんだなぁ」
「うん、ごめんね、僕のせいでビリヤードができなくって。はぁ」
「え、いやいや、羊のせいじゃないって〜。運の問題だよ」
「いや、僕のせいだ。僕は行く先行く先いつもお店が休みになっちゃう。きっと僕だけツキのない星の下に生まれたんだね、はぁ」
とまあ、こんな感じ。常に落ち込んでいるんだ。そんな店が閉まってるとか開いてるとかって、確率の問題じゃないか。みんな等しく遭遇する機会はあるはずだよね。さらにいえば事前に調べておけば済む話だ。それを、運の悪い自慢にされても困ってしまう。リアクションが取りづらいし、楽しくない。だったら前歯に虫歯のできたげっ歯類の話でも論じてもらった方が楽しいと僕は思う。


そういう訳で、僕はこう考えるようにしてる。
事実には良いも悪いもない。事実はそれ自体として存在しているのだ。
自分自身への戒めにしたいし、あるいは羊の彼にも理解して欲しいと思っていることだ。

そういう訳で、羊は相変わらずなよなよしているし、僕はそれをずっと眺めている。
ただ、なぜ僕がそれでも羊と一緒にいるかというと、それは彼の笑顔はとてもいい顔をしているからである。彼の毛がグレーであろうと、悪いことが起こっていようと、それは変わらないことなのだ。

事実には良いも悪いもないと言ったけれど、彼が笑うということは、悪くないなと思うのだ。