じょんするめ

いろんな記事を気まぐれに書きます。イイムラヒロキより。

悪い夢のはなし。

いまから悪い夢の話をしようと思う。
悪い夢ってよく言うけれど、実際には悪いというより怖いの方が正しいんだろうね。

だから正確には怖かった夢の話をします。

これは小さい頃の夢。
幼い頃に高熱を出すと、健全な悪夢をよく見たものだ。例えば誰かに襲われる夢だったり、大きなものに追われる夢であったり、あるいは火事になる夢だったり。
そういうのは健全な悪夢だと思う。

僕の今でも覚えている健全でない悪夢はとても不思議な怖い夢だった。健全でないから覚えているんだと思う。
僕がそのとき見ていたのは、きわめて圧倒的な何かで、そのとき僕は部屋の隅にいた。

その部屋は不思議にのっぺりとした白い壁紙の貼られた、とてもとても広い直方体の箱であった。直方体だけれど、辺は不思議に歪んでいて、まっすぐだった。奇妙な辺だった。
そして割と広い空間だった。東京ドームくらいあるんじゃないのかな。とにかく広い箱の片隅に、僕は体育座りをしていたのだ。


そんな部屋にいたって、怖くなんかないと思うだろう。事実、僕だって現実に体験しても怖くないと思うだろう。でもその夢の何が怖いって、それは圧倒的な空間があることだ。部屋の隅に座る僕の頭の斜め上の方には圧倒的な空間の作る重みが、質量があった。その空虚な重みに押しつぶされて、僕はとてもとても怖かったのだ。

どう説明したら伝わるだろうか。そうだな、例えばアメリカのグランドキャニオンで、たまたま人一人が立てるような足場が、崖の前方に突き出しているところを想像してほしい。そこに立つと、そこはとても高く、広大な大地に広がる沢山の崖を見ることができる。足元は遥か下に見えて、自分が高いところにいることが分かる。そして、その目の前の圧倒的な高さと空間に足がすくんでしまうのである。
その、イメージを、さかさまにした感じが、この夢の怖いところだ。高所で感じた空間の恐怖を逆さまにするのだ。うーん、分かりづらい。

まあ、そんな空間による怖さが一つ目の悪い夢だ。



もう一つは一年ほど前に見た夢だ。
これは比較的健全な悪夢。

僕が気がつくと僕の前歯に不自然な感覚があった。なので僕は舌を使って僕は前歯に触れようとした。だけど、そこには前歯が抜け落ちたあとの、歯の根の形そのままの歯肉の違和感が存在していたのだ。うわっ、と僕はビックリしてもう一回舌で確認してみた。

そうすると、次々に歯がポロポロ、ポロポロと、抜け落ちてきて、抜けたあとの暗い穴からは血がだらだらと豊かに流れ出てくるのだ。
そこに痛みは無かった。痛みは感じないのに、なぜかどんどんと血は溢れる。溢れる。
その奇妙な感覚に僕はうわああと叫び、そこで僕は目を覚ました。

はっとして夢か、と思った僕は体を横に向けて眠っていたみたいだった。左を向いていたので、Wi-Fiルーターが見えていたからだ。
普段ならここで、あー怖かった、と寝るのだが、今回は違かった。

体が動かなかったのだ。

これがいわゆる金縛りか、と別に焦りはしなかったけど僕は感動していた。死ぬまでに一回は味わいたかったのだ。なので、このあと特に幽霊が出るということもなく、僕は慣れてきてから寝ようと思って再び眠ってしまった。きっと幽霊も金縛り損をしたに違いない。

これが(金縛りの前まで)二つ目の印象的な悪夢であった。


悪夢なんて見たくはないけれど、そのなかでは奇妙な出来事がよく起こるので、後から思い返すのは楽しいものだと、一人思うのである。
最近夢を見なくなったので、悪夢でさえそろそろ恋しい。